大阪生まれ福岡在住の筆者が、自由にボートゲームのあれやこれやを書き連ねるブログです。
ボドゲが活発な福岡から楽しいことも難しいことも発信します。

【レビュー・考察】ナショナルエコノミー【安全メットが今日も行く】

どもども、ゆーやです。

ボードゲームは様々なジャンルに分かれますが、中でも筆者が大好きなジャンルに「ワーカープレイスメント」というジャンルがあります。「自分の手持ち駒(=働き手)を、アクションが書かれた場所に置く」様が、安直に英語になったやつですね。

ワーカープレイスメント自体は多くのゲームがあり、昨今様々なメカニズムと組み合わせて展開されていますが、中には限界まで要素を削った、シュッとした仕上がりのものも存在。

とゆーわけで今回は、ワーカープレイスメントのシュッとしたやつ代表(と勝手に思っている)のゲーム『ナショナルエコノミー』をご紹介!

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◆ナショナルエコノミー(プレイ時間:60分  プレイ人数:1~4人)

【ルール概要・システム紹介】

① 手元の労働者カード(以降ワーカーと記載)1枚を、共通の場に出ている建物カード1か、自分の場に出ている建物カード1枚に配置する。

② 配置した建物の効果を処理して、次のプレイヤーへ。

③ 全員がワーカーをすべて配置したらラウンド終了。
  ラウンドごとに決められた給料をワーカーに支払う。

④ ①~③を10ラウンド繰り返してゲーム終了。
  お金とカードの点数を合計して一番高い人の勝ち!

企業の代表となって、社員を使ってお金を稼ぎながら建物を建てていく。
オーデンの祝祭の時と同様に「ワーカーを置く→効果を処理」を繰り返す、非常にシンプルなゲーム。複雑な点数計算も、お金以外の資源も、マジョリティやロンデルやバッティングやパズルなどの要素も一切存在しない。(後半はボドゲのシステムの名称。興味のある方は調べてみよう)

それでもこのゲームを取り上げたのは、筆者が「引き算の美学」と「上手なアクセント」と「絶妙な苦しさのバランス」を強く感じる、大好きなゲームだからだ。

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いかにも工事してます!な感じの建物がたくさん並ぶ

●引き算の美学
前述のとおり、手札とお金以外の資源はなく、情報として非常にすっきりしている。建物カードにはいろいろな効果が書かれているが、「カードを引く」「お金をもらう」「点数になる」以外に特殊なものはわずか数枚で、これまた明瞭。
「特殊効果たくさんー!」「駒もたくさんー!」「テキストいっぱいー!」そんなゲームももちろん好きだが、このゲームはそこをあえてバッサリ切り捨てることで、反対に目立つような仕掛け方を強く感じる。
味の濃い料理が多いからこそ輝く、さっぱりとしたサラダみたいな感じだ(?)

●上手なアクセント
基盤がシンプルだからゲーム自体もあっさり…とさせないのもこのゲームの魅力。
ポイントはお金周りのちょっとしたアクセントと見ている。

このゲームのお金は、「国のお金」と「家計」という2つのプールに分類される。
これらのプールは、下のような特徴があり、他のゲームにはないようなお金の流れを生み出す。
・建物を売却すると「国のお金」からお金を獲得できる。
・ワーカーの給料支払いは「家計」へと払われる。
・カードの効果でお金を得るときは「家計」からしか得られない。

これが非常にいやらしい。
プレイヤー間で使えるお金が「家計」によってがっつり制限されてしまうので、お金を安定して得るためには建物を「建てたうえで手放す」必要が出てくる。建てるのは決して楽じゃないし、自分の建てた建物を手放すと、他のプレイヤーが利用できるようになってしまう。少しのアクセントで大きな遠回りをさせられるので、「必要なお金を集めつつ、いかに自分の場に建物出すか」「何を手放して何を残すか」「家計の残高は十分か」と、毎ラウンド考えどころに困らない。

●絶妙な苦しさのバランス
このゲームはとにかくお金が苦しい(さっきから金の話ばっかり…)
というより、ゲーム作者が意図的に「お金に余裕を全く持たせないギリギリの調整」を行っているように感じる。なんせこのゲーム、プレイした体感として、
・ちょうど蓄えを作り始められそうなタイミングで、ワーカーの賃金が値上げ
・全員でがっつくとギリギリ足りなくなるぐらいの家計への流入
・手札上限5枚の絶妙な足りなさ(建物は手札をコストにする)
と、どの要素もあと少し自由にさせない場面が1プレイで何度も多発するのだ。

少しの不足を解決したい、それゆえに激化する1stプレイヤー争い・ドローソース争い…と、不自由ゆえにシステムのシンプルさからは考えられないぐらいのインタラクションを発生させる。そのインタラクションは新たな苦しさと不自由の種となって、プレイヤーを楽しませてくれる。

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安全メットのナイスガイで、場はいつだってぎちぎちである…

この完成度で箱は小箱、プレイは1時間なのだから大したものだ。
大阪にいる友人は、仕事で出張に出る際はカバンに忍ばせて、業務後にホテルでソロプレイを楽しんでいる…という話も聞いたことがある。
様々な面でコストパフォーマンスに優れた逸品だ。

なお、今時点で『ナショナルエコノミー』シリーズとして3作販売されている。
回をかさえるごとに少しずつ追加の要素はあるものの、根っこのシステムは変わらないので、好みの作品を遊んでみてほしい。

【自分語り】

何のタイミングか遊ばせてもらい「この小ささでこんなおもろいの!?」と感動した作品。箱の収納からシステムに至るまで、とにかく無駄のない感じが非常に刺さった。

今日までで、すでに何十回とプレイしているが、何度やっても飽きないしだれとでもやりたい。オープン会からボドゲカフェ、はたまた旅行のお供にと、我が家でも大活躍である。

なお、何回もやってるからと言って勝率が高いわけではない…(悲)

【終わりに】
スマートな仕上がりが魅力のワーカープレイスメントゲームの紹介でした!
手に入りやすく、ボドゲに慣れて「ちょっとやりごたえのあるものが欲しいな…」という方にはぜひ一度試してほしい作品です!